庭にかかわる読み物いろいろ
辻元史郎の庭コラム
第7回 設計事例 エクステリアのスロープデザイン
スロープが外構の主役
これからの住居を考える場合、高齢者への配慮はもちろんのこと、幼児の安全や大きな荷物の出し入れ、時には自転車の収納などを含めて、スローブがあれば便利なことが多々あります。
そこで、今回はスロープをエクステリアのシンボルとして、デザインしてみました。
上記パースを見てお分かりのように、スロープが道路と並行に面しています。奥のテラスからつながる木々のスクリーンが、スロープと共鳴し、通りたくなる住宅ファサード※を感じませんでしょうか。
実は、住宅のエクステリア計画では、スロープはデザインし辛い機能です。
勾配を一定以下にするために長さが必要となり、占有するスペースが多くなります。庭とつなぐ目的が優先されるため、庭空間が分断されたり、バランスが崩れたりすることがよくあります。
そこで発想転換、庭の外の道路側にスロープを配することで、外から見えることを逆に活かしてデザインしました。
【スロープを上がれば、そこはテラス】
・リビングからはスロープが見えない、緑に囲まれたプライベートガーデン
・道路からはスロープを見せるクローズ機能ですが、住宅ファサードはオープン感覚の軽快なデザインです。
【機能共有性】
・3か所のスロープ照明は、門灯・庭テラスなどと併用することで無駄をなくし、夜間もスロープを安全に使用できる。
・リビング前のテラス高さを庭地面より30cmアップすることでリビングから庭への出入りを容易にする。さらにリビングからは眺めも庭が広く見え、一体感が増す。
・30cmアップしたテラスにスロープが一体となり、更に機能性が向上。車椅子でも、面倒な玄関・廊下を通らずともリビングに上がれます。自転車の収納や大きい荷物の運搬にも便利です。
【緑のデザイン】
テラスを囲む緑のスクリーンによる、見え隠れが庭に開放感を与え、スロープ、門まで続く緑の流れが、ファサードを引き立てます。一方でこの緑とのつながりは、スロープラインを機能面だけでなく、ファサードのシンボルとしての、見せるスロープになっています。
【小さなアイデア】
・玄関に上がる階段は、移動をスムーズにするだけではなく、時にはオブジェ台となる。
・テラスの角に小さな落葉樹を一本配し、塀の前には階段をとらずオブジェスペースにする。この2点が和室からの眺めにメリハリをつける。
以上が今回ご紹介のエクステリアの要点です。
スロープをデザインする事例、いかがですか。すべての敷地には難しいかもしれませんが、外構計画は庭と一体に考えデザインすれば、このように庭に美観・機能を損なう事無く、住宅外観がスロープともよくなじむ好例です。
注※
【住宅ファサード】住宅を構成する外構を含めた全体風景
1942年生まれ
「エクステリア」が周知される以前より住宅の外廻りに魅せられ独修。機能性を重視した独自のデザインを乞われ、エクステリアメーカーの門扉・フェンス等のデザイン開発に関わる。
大手ハウスメーカー モデル住宅のエクステリア設計を多数手掛け、個人住宅の庭・造園 エクステリア設計の第一人者との評を受ける。
1984年 エクステリア・造園 設計事務所 SUTADIO dim を設立。大阪国際花の博覧会(郷土デザイン部門)最優秀賞受賞。近年はエクステリア・造園を志す若手の教育に力をそそぐ。
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