庭にかかわる読み物いろいろ
大塚紀雄の庭コラム
第6回 費用とデザイン《2》
以前の記事で庭づくりは業者選びから始まると述べました。 今回は、庭の予算の50%はデザイン費?というお話をしましょう。
庭を構成する材料・商品には既製品が少なく、どうしても植木・石・砂利などの自然材料が主になります。設計したものと同じ自然材料はもちろんありません。合った材料を選ぶためには、実際につかう数量以上を用意する段取りが必要です。
まず植木を例にあげてみましょう。 植木は、造園に書かせない素材です。立木の高さの変化は、庭の美しさにつながります。高い木と低い木が強弱を生み出し、奥行きや広がりが生まれ美しい庭になるわけですが、この「高木」を選ぶ事がとても大切で、大変です。
そのお庭のデザインに見合った枝振りの3メートルもある「高木」を、造園に長けた職人が西へ東へ探しまわり、やっと見つかれば今度は輸送できるトラックを手配して……。それは、能力とコストが必要になる大変な作業です。
「では、若く細い木を選び、成長するまで手入れをすればよいのではないか?」とお考えになるでしょう。たしかに、若い木ならトラックを手配しなくても、ダンボールに梱包して配送業者を利用することができますし、枝振りも多くの素材から選ぶ事ができ、適したものがすぐに見つかるかもしれません。コストだって、半分ほどにも安くなります。
それでも、3メートルの高木が必要な庭に、2.5メートルの木を入れてはいけません。2.5メートルの状態で庭に植えた木が3メートルの高さになるまでに、どのような成長をするでしょうか? 日当りは? 根の張り方は? 最適な枝振りにまで成長するでしょうか?
自信をもって申し上げます。どんな腕のよい職人が植えても無理です。2.5メートルで山から住宅の庭に移された木は、それ以上にはならないのです。 住宅の庭で、十分に栄養を与えられしっかり根を広げられるでしょうか? もちろん無理。山の中のように、上から、横から、十分太陽の光がふりそそぐでしょうか? 言わずもがなです。庭の目隠し目的に高木を植えたのに、思ったところに枝がないなんて、情けない話ですよね。デザインにあった高さ・枝振りの木を使わないといけないんです。
そこで、予算が高くつくのになぜ高木をつかったデザインをするのか、となります。それが最初に申し上げた「デザイン費」なのです。木ではありませんが、レンガを使った現場の例をお話ししてみましょう。 下の写真をごらんださい。
ホテルや美術館にある中庭のように美しいですね。モダンな彫刻を置いても映えそうです。これは一般のお客さまの住宅に施工されたお庭。この写真のレンガは、直線で積むのではなく傾斜をつけて曲面をつけた施工方法となっています。この曲面が全体を柔らかく、またダイナミックな風景に演出しています。熟練したレンガ職人の手によって、個性的で他にはない庭に仕上がりました。
お分かりになりますね。このレンガ、まっすぐに積むのと曲面をつけて積むのでは値段が3倍も違ってくるんです。このお客様と施工業者は、それでもその3倍の予算をかけて庭をつくりあげました。「価値があるかどうか」は、そのお客様しだいなのです。
植木、レンガ、石……。庭づくり特有の造形費用が、全体の予算に大きく影響してきます。それは単に価格の高い低いでは判断できないことです。そこで私はいつも口を酸っぱくしてお客さまにいうのです。デザインセンスに信頼があって、フィーリングが合い、共につくり上げようという業者、ひいては「人間」との出会いが庭づくりのすべてだ、と。
ある意味、いちど信頼したらどれだけその業者にまかせきれるか、という「度胸」も、お客様には必要かもしれませんね。
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